2014年09月08日

東洋新薬  『すいおう(甘藷若葉末)』の特徴的なポリフェノールが抗糖尿病ホルモンGLP-1の分泌を促進させることを国際ポリフェノール会議にて発表

株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、中部大学応用生物学部 津田 孝範 教授、北海道大学大学院農学研究院 原 博 教授および比良 徹 講師と共同で、『すいおう(甘藷若葉末)』に含まれる特徴的なカフェ酸誘導体が、血糖値上昇抑制作用のメカニズムに関与することを確認し、第27回国際ポリフェノール会議において発表いたしました。

■ 『すいおう(甘藷若葉末)』とは
 『すいおう(甘藷若葉末)』とは、サツマイモの一品種である「すいおう(翠王)」の茎と葉をまるごと粉砕し、粉末化した東洋新薬の独自素材です。「すいおう(翠王)」は、えぐ味と青臭さのためこれまで敬遠されがちだったサツマイモの葉・茎・葉柄を おいしく食べられるように開発された品種で、ポリフェノールを豊富に含むのが特徴です。

 また、すいおうにはカフェ酸誘導体〔注①〕と呼ばれる種類のポリフェノールが含まれており、これらのポリフェノール成分には多様な生理作用があることが知られています。このうち、トリカフェオイルキナ酸(3,4,5-トリカフェオイルキナ酸)は他の野菜にはほとんど含まれていないことから、すいおうの特徴成分の一つであると考えられます。

 今回当社は、すいおうに含まれる特徴的なポリフェノールである3,4,5-トリカフェオイルキナ酸を代表とするカフェ酸誘導体が、血糖値上昇抑制作用メカニズムの一つとして知られるGLP-1(glucagon-like peptide-1)〔注②〕分泌促進作用を有することをin vitro試験で確認しました。
 また、これらのカフェ酸誘導体を含みかつ食物繊維などが除去されたすいおう抽出物での2型糖尿病〔注③〕改善作用をin vivo試験で確認し、第27回国際ポリフェノール会議(2014年9月2日(火)~6日(土)、名古屋大学豊田講堂・シンポジオン)において発表いたしました。
 また、本知見を含むすいおうの血糖値上昇抑制作用およびそのメカニズムに関する研究成果の論文が、英国王立化学会発行の学術誌『Food & Function』〔注④〕に掲載されました。

■ 研究のポイント
当社は既に、すいおうの血糖値上昇抑制作用およびそのメカニズムの一つとしてGLP-1の分泌促進が関与することを確認しております。
 そこで今回は、すいおうに含まれる特徴的なポリフェノールである3,4,5-トリカフェオイルキナ酸をはじめとするカフェ酸誘導体が、GLP-1分泌促進に関与するかどうかをin vitro試験にて検証しました。
 また、これらのカフェ酸誘導体を含み、かつ食物繊維などが除去されたすいおう抽出物が、2型糖尿病モデルマウスでみられる血糖値上昇を改善するかどうかを検証しました。

■ 発表骨子
【試験1】 すいおう中に含まれる各種カフェ酸誘導体のin vitro試験におけるGLP-1分泌促進作用
 GLP-1を産生する細胞(GLUTag細胞〔注⑤〕)に、すいおうに含まれる各種カフェ酸誘導体(3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、4,5-ジカフェオイルキナ酸または3,4,5-トリカフェオイルキナ酸)溶液を同濃度にて添加した後、上清中のGLP-1濃度を測定し、GLP-1分泌能に及ぼす影響を検討しました。

 その結果、各種カフェ酸誘導体により上清中のGLP-1濃度に有意な上昇がみられ、in vitro試験において各種カフェ酸誘導体がGLP-1分泌を促進することが確認されました。その中でも特に3,4,5-トリカフェオイルキナ酸では、他のカフェ酸誘導体と比較して、顕著なGLP-1分泌促進作用が確認されました。

【試験2】 すいおうに含まれる各種カフェ酸誘導体を含むすいおう抽出物のin vivo試験における2型糖尿病改善作用
 2型糖尿病モデルである雄性KK-Ayマウス〔注⑥〕に、すいおう抽出物を3%配合した普通飼料(すいおう抽出物群)を5週間自由摂取させた後、血糖値を測定しました。なお対照として、すいおうを配合していない普通飼料を自由摂取させた群(コントロール群)を設けました。

 その結果、すいおう抽出物群において、コントロール群と比較して血糖値の上昇を有意に抑制することが確認されました。すいおう抽出物にはカフェ酸誘導体が含まれ、一方で食物繊維が除去されており、この効果の一因としてカフェ酸誘導体の関与が考えられました。

 以上のことから、すいおうに含まれる特徴的なポリフェノールである3,4,5-トリカフェオイルキナ酸を代表とするカフェ酸誘導体が、すいおうの血糖値上昇抑制作用メカニズムの一つであるGLP-1分泌促進作用に関与することが示唆されました。またこれらのカフェ酸誘導体を含むすいおう抽出物は、2型糖尿病改善作用を有することが示唆されました。

 東洋新薬は今後もすいおうの機能性を探求し、独自性の高い素材開発、商品開発に注力して参ります。

〔注①〕 カフェ酸誘導体
カフェ酸を含む構造の総称で、すいおう中に含まれる特徴的なポリフェノールの一つです。
すいおう中にはジカフェオイルキナ酸類(3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、4,5-ジカフェオイルキナ酸)や3,4,5-トリカフェオイルキナ酸などのカフェ酸誘導体が含まれています。特に3,4,5-トリカフェオイルキナ酸は他の野菜にはほとんど含まれず、他のカフェ酸誘導体より強い抗酸化作用、抗変異原性作用などがあることが報告されています。

〔注②〕 GLP-1(Glucagon-like peptide-1)
消化管上皮の内分泌細胞から分泌される消化管ホルモンで、食事を引き金として分泌されます。
作用の一つに血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促進させることが知られています。

〔注③〕 2型糖尿病
糖尿病は、1型と2型にタイプ別されます。2型糖尿病は主に血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を下げるインスリンの働きが悪くなることにより起こるとされています。食生活や運動などの生活習慣が関わっている場合が多く、わが国の糖尿病の95%以上はこのタイプであると言われています。

〔注④〕 Food & Function
英国王立化学会が発行する健康や栄養に関連する食品の化学、物理学、生物学に関する国際学術誌です。
本知見を含むすいおうの血糖値上昇抑制作用およびそのメカニズムに関する研究成果の論文が掲載されました。
「Nagamine R, Ueno S, Tsubata M, Yamaguchi K, Takagaki K, Hira T, Hara H, Tsuda T : Dietary sweet potato (Ipomoea batatas L.) leaf extract attenuates hyperglycaemia by enhancing the secretion of glucagon-like peptide-1 (GLP-1), Food Funct., 2014, 5(9), 2309-2316.」

〔注⑤〕 GLUTag細胞
マウス大腸由来の消化管内分泌細胞で、GLP-1を産生・分泌するモデル細胞です。

〔注⑥〕 KK-Ayマウス
早期かつ重度に肥満・高血糖を示し、2型糖尿病モデルとして研究に一般的に用いられるマウスです。

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