2016年03月30日

『黒ショウガ』の熱産生誘導物質を発見 ― 褐色脂肪交感神経の活動を促進させる成分をつきとめる ―

株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、大阪大学 永井克也名誉教授、武蔵野大学 油田正樹教授と共同で、『黒ショウガ』 に含まれる褐色脂肪組織を支配する交感神経の活動を促進させる成分を動物試験にて確認し、日本薬学会第136年会において発表いたしました。

【演題】
 ラット褐色脂肪組織を支配する交感神経を活性化させるKaempferia parviflora (Kp)抽出物中の関与成分の探索
【講演者】
友澤 寛1)、北村 整一1)、鍔田 仁人1)、池口 主弥1)、油田 正樹2)、永井 克也3)、4)
1)株式会社東洋新薬、2)武蔵野大学、3)株式会社ANBAS、4)大阪大学

■『黒ショウガ』とは
『黒ショウガ』は、ショウガ科バンウコン属の植物で、学名をKaempferia parvifloraとし、英語では“Black Ginger”、ラオス語では“Khing-dam:キング(ショウガ)-ダム(黒い)”と呼ばれており、「ポリメトキシフラボノイド〔注①〕」という特徴成分が含まれています。
黒ショウガはタイやラオスの山間部に自生し、現地ではお茶やリキュールなどにして飲まれており、伝承的な機能性として滋養強壮や冷え症改善があると言われてきました。

今回当社は、黒ショウガに含まれる特徴成分ポリメトキシフラボノイド類のうち、5,7,3´,4´-tetramethoxyflavone(テトラメトキシフラボン;以下、TMF)が褐色脂肪組織〔注②〕を支配する交感神経の活動を促進することを確認し、日本薬学会第136年会(2016年3月26日(土)~29日(火)、パシフィコ横浜)において発表いたしました。

■研究の背景
褐色脂肪組織は、脂肪を燃やし熱を産生する役割を担っており、その発熱能力は骨格筋〔注③〕の約100倍もあると言われています。しかしながら、ヒトの褐色脂肪組織の活動は加齢と共に低下していき、エネルギー代謝が減弱していきます。そのため熱産生増加によるエネルギー代謝の促進は、ダイエット効果の鍵として近年注目されています。
当社ではこれまでに、黒ショウガの機能性として、褐色脂肪組織を支配する交感神経活動促進作用、体温上昇作用および褐色脂肪細胞の分化〔注④〕誘導促進作用などを動物試験で確認しております。
そこで今回当社は、褐色脂肪組織の交感神経活動を促進する黒ショウガ中の成分を探索するため、黒ショウガからポリメトキシフラボノイドを抽出し、動物試験にて交感神経の活動を測定しました。

■発表骨子
9週齢のラットに、黒ショウガに含有するポリメトキシフラボノイドであるTMF、もしくはコントロール(水)を経口的に投与し、褐色脂肪組織を支配する交感神経の活動を電気生理学的手法〔注⑤〕により経口投与直後から1時間後まで5分毎に計測し、これらの平均値を算出しました。
その結果、TMFにおいて強い交感神経の活動が示されました。以上より、黒ショウガに含まれるポリメトキシフラボノイドであるTMFに、褐色脂肪組織を支配する交感神経の促進作用、熱産生作用があることが示唆されました。

東洋新薬は今後も黒ショウガの機能性やその機序を解明することで、独自性の高い商品を開発し、より一層の拡販に注力して参ります。

〔注①〕ポリメトキシフラボノイド
ポリフェノールの一種で、柑橘果皮に含有する「ノビレチン」などが有名です。フラボン骨格に多くのメトキシ基(-OCH3)がついているのが特徴です。近年の研究では、抗がん作用や抗炎症作用があるという報告があります。

〔注②〕褐色脂肪組織
脂肪組織は、エネルギー源として脂質を貯蔵する役割を持つ白色脂肪組織が有名ですが、褐色脂肪組織は、脂肪酸をエネルギー源として利用し、熱を作り出す役割を担っている組織です。

〔注③〕骨格筋
体を動かす「筋肉」のことです。普段は大脳の支配下におかれているため意識的に動かすことができますが、寒いときには、体温調節中枢である視索前野から運動神経に指令を送り、『ふるえ』を起こして熱を作り出します(ふるえによる産熱と呼ばれています)。

〔注④〕分化
生物の発生過程で、分裂増殖する細胞が機能的・形態的に変化することを言います。

〔注⑤〕電気生理学的手法
動物の神経線維を電極に吊り上げ、その電気活動の変化を測定し記録する方法です。微弱な電気活動をアンプを使って増幅し測定しています。

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