2015年06月04日

三相乳化技術により肌に負担をかけず有効成分を浸透させる化粧品を実現

株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、城西大学との共同研究で、三相乳化技術を用いた化粧品の有効成分の皮膚浸透性及び、角層細胞間脂質モデルとの馴染みの良さを確認し、日本薬剤学会第30年会において発表いたしました。

【演題】
 水溶性化合物の皮膚浸透性に対する三相乳化製剤中の油剤量の影響
【講演者】
橋本 拓郎1)、山下 和也2)、本間 明日香2)、杉林 堅次1)、徳留 嘉寛1)
1)城西大学 薬学部、2)株式会社東洋新薬

■三相乳化技術とは
三相乳化技術〔注①〕は、従来用いられてきた界面活性剤の化学的作用による乳化ではなく、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用(ファンデルワールス引力)を利用した新しい乳化技術です。

当社ではこれまでに、三相乳化技術ならではの特徴・強みを生かして界面活性剤フリーで肌に優しい基礎化粧品、みずみずしい感触とクリーム級の保湿力を兼ね備えたクリームインジェル、耐水耐汗性に優れている日焼け止めやハンドクリームなどへと応用展開してきました。

■研究の背景
皮膚の最外層である角層は、角質細胞と角層細胞間脂質(以下、「細胞間脂質」)がブロックとモルタルのような関係で存在し、外部刺激から肌を守る重要なバリア機能の一部を担っています。従って、化粧品中に配合された有効成分を皮膚内部へ浸透させるには、このバリア機能が壁となります。
一般的に、有効成分の浸透を促進するために、肌の油分にも水分にも馴染みやすい界面活性剤やエタノールなどを配合する方法がありますが、配合バランスが悪いと肌のバリア機能を壊してしまう可能性があります。そのため、肌のバリア機能の役割を果たす角層に負担をかけずに皮膚内部へと有効成分を浸透させることは化粧品業界の重要な課題の1つであり、これまで数多くの研究がなされてきました。

今回当社は、城西大学 徳留嘉寛 教授との共同研究にて、三相乳化技術を用いた化粧品は①有効成分が皮膚に浸透し、その浸透量は油の量でコントロールできる可能性があること、②細胞間脂質モデルを壊さず良好に融合する(馴染む)ことを確認し、日本薬剤学会第30年会(2015年5月21日(木)~23日(土)、長崎ブリックホール)において発表いたしました。

■発表骨子
有効成分の皮膚への浸透量を評価するために、グリチルリチン酸ジカリウム〔注②〕を有効成分として 三相乳化技術を用い、油(スクワラン〔注③〕)の量を変えて調製した3種類の乳液(以下、「三相乳化乳液」)と、比較品として「水のみ」及び、ナノ粒子を水中に分散した「ナノ粒子のみ」のサンプルを、それぞれマウスの皮膚に適用し、24時間後の皮膚中に浸透した有効成分量を測定しました。
その結果、皮膚中に浸透した有効成分量は、比較品2品より三相乳化乳液の方が多いことから、三相乳化技術を用いた化粧品は成分の浸透性に優れていることが示されました。

さらに、三相乳化乳液の油量の違いによる有効成分の浸透量を比較すると、油量依存的に有効成分の浸透量が増加したことから、油の量によって有効成分の浸透をコントロールできることが示されました。
次に、膜融合試験法〔注④〕を用いて、三相乳化乳液とバリア機能の1つである細胞間脂質のモデルとの融合率(馴染み方)を評価しました。
その結果、三相乳化乳液と細胞間脂質モデルは、良好に融合する(馴染む)ことが確認され、さらにその融合率は油量依存的に増加しました。

このことから、三相乳化乳液は、細胞間脂質を壊さずに、肌へ優しく馴染むことで有効成分が浸透していくことが示唆されました。

これらの結果により、三相乳化技術を化粧品に用いることで「肌への優しさ」と「有効成分の浸透性」の両方に優れた化粧品開発への寄与が期待できます。

東洋新薬は今後も三相乳化技術を用いた独自性の高い化粧品を開発し、より一層の拡販に注力して参ります。

〔注①〕三相乳化技術
親水性ナノ粒子の物理的な作用(ファンデルワールス引力)によって乳化を行う神奈川大学の特許技術(特許 第3855203号『乳化分散剤及びこれを用いた乳化分散方法並びに乳化物』)で、化粧品のみならず、食品、燃料、農薬などのさまざまな分野で利用されており、国内のみならず海外の多くの企業からも注目を集めています。化粧品製造に利用した場合、乳化剤として必ずしも界面活性剤を使用する必要がないため、耐水耐汗性などの機能的優位性や界面活性剤フリーといった幅のある訴求が可能となります。

〔注②〕グリチルリチン酸ジカリウム
甘草から抽出して得られる水溶性化合物です。抗炎症作用や抗アレルギー作用をもっています。

〔注③〕スクワラン
深海ザメや植物性由来の油脂スクワレンに水素を添加して得られる油剤です。皮膚中のスクワレンと構造が近いことから化粧品に汎用されています。

〔注④〕膜融合試験法
セラミドやコレステロールなど細胞間脂質の組成をもとに、蛍光マーカーで標識した細胞間脂質モデルを作成し、三相乳化乳液と相互作用させ、30分後の蛍光強度を測定し、三相乳化乳液と細胞間脂質モデルの融合率(馴染み方)を評価しました。

 

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