2018年03月19日

東京大学との連携協定に基づく成果を発表―『大麦若葉末』の腸内細菌叢改善作用を確認―

株式会社東洋新薬(本社:福岡県福岡市、本部:佐賀県鳥栖市、代表取締役:服部利光)は、東京大学分子細胞生物学研究所白髭克彦教授との共同研究において、大麦若葉末の摂取が腸内細菌叢の改善を促すことを確認し、日本農芸化学会2018年度大会において発表いたしました。

【演題】
大麦若葉末の摂取がヒト腸内細菌叢に与える影響の解析

【講演者】
須谷 尚史1)、草場 宣廷2)、眞志喜 桜2)、鍔田 仁人2)、古俣 麻希子3)、立花 広太3)、白髭 克彦1)
1) 東京大学、2)株式会社東洋新薬、3)TAK-Circulator株式会社

■『大麦若葉末』とは
大麦若葉末は、イネ科オオムギの若葉部を乾燥、微粉砕加工した機能性食品素材で、食物繊維を豊富に含み便通改善作用などをもつことが知られ、青汁などの原料として用いられています。
今回、当社と東京大学分子細胞生物学研究所 白髭克彦教授は、大麦若葉末の腸内細菌叢〔注①〕改善作用を確認し、日本農芸化学会2018年度大会(2018年3月15日(木)~18日(日)、名城大学天白キャンパス)において発表いたしました。

 

■研究のポイント
当社は2016年10月に東京大学と連携協定を締結し、健康食品、化粧品等の新規素材開発及び製剤技術開発とその実用化に向けた共同研究の推進に取り組んでおり、本発表はその成果の一環となります。
これまでの研究で大麦若葉末の摂取により角層水分量〔注②〕の増加など皮膚の状態改善作用を示す結果が得られていましたが、そのメカニズムは明らかとなっていませんでした。今回はそのメカニズムを解明すべく大麦若葉末摂取による皮膚状態の改善作用及び腸内細菌叢の改善作用をヒト試験にて検証しました。

 

■発表骨子
乾燥による肌荒れなどを有する健常成人女性28名を無作為に2群に分け、大麦若葉末を含む食品(大麦若葉末群)または、大麦若葉末を含まない食品(プラセボ群)を8週間継続して摂取させる二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験〔注③〕を実施しました。摂取開始前、摂取4週間後、及び8週間後に頬の角層水分量の測定を行い、また、摂取開始前と摂取8週間後の被験者の便を採取し、次世代シークエンサーを用いた16SリボソームRNA解析〔注④〕によって腸内細菌叢の同定を行いました。
その結果、大麦若葉末群では、摂取4週間後、及び8週間後の頬の角層水分量の変化量において、プラセボ群と比較して有意な増加が認められました。
また摂取前後の腸内細菌叢の変動に関して、大麦若葉末群ではプラセボ群と比較して、善玉菌とされるBifidobacterium longum 〔注⑤〕の増加傾向が認められ、悪玉菌とされるClostridiaceae科〔注⑥〕とErysipelotrichi網〔注⑦〕の有意な減少、または減少傾向が認められました。

以上のことから、大麦若葉末摂取により皮膚の状態が改善されることが示され、そのメカニズムが大麦若葉末摂取による腸内細菌叢の改善によるものであることが示唆されました。
東京大学との連携協定では、東京大学産学協創推進本部とともに研究テーマの探索から取組み、いくつかの共同研究が進行していますが、今回の発表はその成果の第1弾となります。

東洋新薬では今後も東京大学との連携協定を通じ、健康食品、化粧品等の新たな市場を創造し、社会貢献に取り組んで参ります。

〔注①〕腸内細菌叢
ヒトの腸内には百種類を越える多様な細菌が常在し、腸内細菌叢と呼ばれる複雑な微生物生態系を構築しています。腸内細菌叢の腸内細菌の種類は年齢や食生活により変化し、幅広く生体に影響することが知られています。

〔注②〕角層水分量
皮膚表面の角層に含まれる水分量で、肌の潤いの指標となります。

〔注③〕二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
二重盲検試験とは、被験者の思い込みや試験実施者の行動が被験者に影響を与える可能性を排除するために、被験者及び試験実施者いずれにも試験食品の中身を知らせずに実施する試験です。またプラセボ対照並行群間比較試験は、異なった2群以上に被験者を分け、被験食品またはプラセボ食品を同時期に摂取させ、それぞれの効果を評価する試験です。

〔注④〕次世代シークエンサーを用いた16SリボソームRNA解析
生物の種の系統を正確かつ定量的に解析できる方法です。大量のシークエンス(塩基配列同定)が必要となるため、実施には次世代シークエンサーの運用が必須となります。なお、解析は東京大学分子細胞生物学研究所にて実施しました。

〔注⑤〕Bifidobacterium longum
腸内細菌において善玉菌とされるビフィズス菌の種(species)の一つです。

〔注⑥〕Clostridiaceae科
腸内細菌の科(family)の一つで、食中毒の原因菌であるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)やボツリヌス菌(Clostridium botulinum)を含むことが知られています。

〔注⑦〕Erysipelotrichi網
腸内細菌の網(class)の一つで、肥満と連動して増減することが知られています。

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